「飲食店は給与が低い」それが飲食業界の常識なら、そんな夢のない常識ごと変えてしまえばいい。

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創業から20年、時代の変化を的確にとらえて繁盛店を生み続ける株式会社 個人商店の代表 光山英明氏。多店舗展開をしてもなお「儲かるのはオーナーだけ」とされる外食産業において、従業員が年収1,000万円を稼げる仕組みをつくった光山氏に、独自の戦略とその背景にある思いを聞いた。

目次

従業員を適正に評価する仕組みは失敗と実験から生まれた

─飲食店は稼ぎにくい業種の代表格と言われますが、光山さんが実施している評価基準や仕組みはどいうものなのでしょうか

そもそも私が経営者のプロではなかったですから、店舗が増えるにつれて給与の上げ方がわからなくなってしまったのです。例えば、売り上げが落ちているにも関わらず、「がんばっている」という理由で昇給するのはどうなのかなと。そこで一定の基準を設け、1ヶ月ごとに基準を超えたら10万円の歩合、超えなければ歩合は無しという評価を府中店で実験してみました。すると1年間で8勝4敗となり、基本給プラス80万円を歩合として支給しました。

─それは嬉しいですね。従業員としてのモチベーションが上がります

ところが、実際には適正な評価ができる仕組みにはなっていませんでした。内訳をみると、勝った月はギリギリ基準を超え、一方で負ける月は大きく下回るという結果だったのです。これでは、年商で前年割れを起こしているにも関わらず、歩合をもらえるカラクリになってしまいます。そこで、1ヶ月ごとの基準に細かいルールを追加して継続するか、あるいは店を買い取るかという二択を店長に提示しました。

一国一城の主という意識が売り上げをつくる

─興味深い提案です。みなさんはどちらの判断をされたのでしょうか

当然のように、誰もが買い取りを選びます。店舗では毎日のように現金が目に触れますし、どれくらい儲かっているか肌感覚でわかりますから。ただ、一括で払える店主はいないので、基本的には数年間の分割払いでの契約にしました。また、その期間中は給料が倍ぐらいになるよう設計し、分割した金額とロイヤリティを支払ってもらう仕組みです。さらに、買い取り後はロイヤリティを減らしたのちに売却が完了となります。

「 従業員には年収1,000万を稼いでほしいし、経営者としては目指せる仕組みを作りたい」

─独立支援のようなかたちですね。なぜその仕組みを作ろうと思ったのでしょうか

商売をする以上、ひとつの大台として年収1,000万円は稼いでほしいんです。しかし、実際のところ社員やアルバイトでは現実的ではありません。そこで、この仕組みを実施したわけですが、私の下にいた頃よりも圧倒的に売り上げが伸びるわけです。これは当たり前で、他人のものでしかなかった店が自分の店になるわけですから。その結果、責任感も生まれ、「もっと効率を上げよう」とか「もう1店舗いけるかも」など、一国一城の主として事業を捉えるようになったのです。このように、年収1,000万円を稼ぐ人が増えてきたので、ホルモン屋限定で卒業できる仕組みにしています。

お店を増やしたいのではなく、仲間が増えた結果お店が増えただけ

─社員が稼ぎやすい仕組みである反面、企業側から見ると得られたはずの利益を減らすとも言えそうですが

見方によってはそうかも知れませんが、私は自分だけが儲けたいと思ったことがないんです。順番としては、稼ぐために人を集めるのではなく、組みたい仲間と働いて稼げたほうがいい。これは店の運営も同様で、いくら儲けようかではなく、「また来たい」と思える店を作れば売り上げはついてきますから。20年前からのお客様を見ていても感じますが、これが商売の答えだと自信を持って言えます。

─すべてが効率や仕組みに偏る一方で、本来のサービス業とされる理想形ですね

一店舗一店舗、魂というか愛情がこもったお店には、お客様も大切にしてくれるものです。さらに、このような本物を手がける仲間が集まることで、結果として店舗数も増えていくと思います。経営者の考えは人それぞれですし、初めから100店舗を目指すという方針も否定はしません。ただ、お客様には店舗数など関係ないし、それより他に大切なことがあるというのが私の考えです。

対外的な評価より、お客様と従業員の満足度を追求する

─本来の「お客様ファースト」を体現されて、その結果どのくらいの売り上げ規模に成長されたのでしょうか

よく聞かれるのですが、実は全体での売り上げをほとんど把握していません。これは独立制度を実施している上で、グループ年商〇〇億円と言っても違和感があるんです。その金額は、厳密には弊社が出した売り上げではありませんし。また、規模や年商は銀行や世間に向けた価値にすぎず、私にとってはどうでもいい(笑)。そのような対外的な評価よりも、時間とお金を使って来てくれるお客様に喜んでいただくほうが重要ですから。

「まったく関係のない外部に評価されるより、お客様に喜んでいただける店を増やしたい」

─地域に愛されるために行なっている具体的な戦略などはありますか

ひとつ例をあげると、新店舗のオープンにインフルエンサーや友人を呼ぶような施策は行いません。お店というのは街の景色になるわけですから、地域の人に食べていただかなければ意味がないわけですね。また、経営者の知り合いだからと、有名人や友人がサービスをされていたらお客様はガッカリします。長く愛されるお店というのは、「心地よい」とか「大切にされている」と感じられることであって、話題性や規模は関係ありません。ですから、これからも売り上げや店舗数は意識せず、すべての店に愛情を込め続けていきます。

光山氏の話を聞いていると、お客様だけでなくスタッフへの愛情が全面に溢れている。なにをするのかではなく、どんな経営哲学で事業をするのか。氏の哲学が他社との差別化になり、2002年の開業から未だ閉店のないグループを実現しているのだろう。

会社名株式会社個人商店
代表光山英明
HP
https://note.com/wa1115/
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