事業づくりは撤退ラインとセット。希望的観測に頼った行動は身を滅ぼす。

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40個の医療関連アプリ(国内シェアNo.1)を開発し、医学研究のデジタル化を推進するメディカルローグ株式会社。患者と医師の明るい未来を目指す野口宏人CEOに、経営での事業づくりから苦労話まで語っていただいた。

目次

アプリで医療の明るい未来を実現する

-なぜ医療のアプリ開発を始めたのでしょうか

前職が医療機器メーカーだったので、これまで多くの医師と話をしてきました。そこでわかったのは、彼らは医療を発展させるアイディアをたくさん持っているということ。しかし、彼らは仕事に追われる毎日で、良いアイディアがあっても具現化できません。そこで弊社が医療アプリやシステムを開発し、医学研究をサポートし始めました。

無知のまま走り出してしまったアプリ開発

-事業づくりで苦労したエピソードなどあればお聞かせください

これまでに40個の医療アプリを開発していますが、最初のゼロイチはトラブルの連続でした。アプリ開発のコストをまったく知らなかったのがそもそもの原因です。例えば、エンジニアを雇用するためには、20~30万円の給与で十分だろうと。ところがスキルによっては100万円すら珍しくなく、その程度の給与は相場の範囲内とのことでした。また、外注した場合も同様で、ひとつのアプリ開発に100~1000万円は当たり前と言うんですね。これでは私が用意した100万円ですら、資金が足りない可能性があることになります。

しかし深刻だったのは、勝手に資金は十分だと思い込んでいたため、この時点で受注してしまっていたこと(笑)。

-エンジニアの採用や外注先を決める前に受注していたと

開発コストを感覚で想定していたので、100万円あれば十分だろうと受注していました。しかし、相場としては十分とはいえない予算です。考えた末、一定の知識があれば作れるだろうと、東大出身の知人に思いつくまま連絡しました。なんとか予算内で手伝ってくれる人を見つけたのですが、本業が忙しくなったということで開発が頓挫してしまったのです。しかもアプリをローンチする1ヶ月前という絶望なタイミングでした。

「カフェで近くに座っていた他人にアプリ開発を依頼したのも、振り返れば良い思い出」

-緊迫した状態からどのように切り抜けたのでしょうか

納期を目前にして開発者がいなくなってしまった。どうしようとカフェで唸っていたところ、奇跡的に近くの席でアプリ開発の話をしている人がいたのです。こんなチャンスを逃すわけにはいかないので、見ず知らずの彼を必死に口説きました。しかも100万円の報酬で、納期1ヶ月という無謀な依頼を受けてくれて本当にありがたかったです。その後、多少の遅れはありましたが、無事にアプリを世に出すことができました。

希望的観測で行動してはいけない

-事業のゼロイチに失敗した経験もあるそうですね

医療連携のシステム開発に失敗しました。もともと医療機関の連携はあったのですが、情報を充実させればさらに効率化を図れるはずと。ところが私は市場調査もせず、「あったらいいな」という感覚だけを頼りに走ったことが問題でした。さらに途中で機能を追加するたびに、コストが膨れ上がってしまって。しかも、ローンチ後の売上げも伸びなかったので、結果的には1000万ほどの投資が失敗に終わってしまいました。

-どのような点に注意すべきでしょうか

現在は、事業づくりの時点であらかじめ撤退ラインを決めています。私が失敗した原因は、感情で動いたこと+途中でやめなかったこと。人は行動を始めると、途中で雲行きが怪しくても続けてしまうケースが多くなります。「ここまで費用と時間をかけたんだから」と、途中で引き下がれないわけです。しかし、長期化するほどコストも膨らむため、感情だけで行動するのはおすすめしません。

また、正しい撤退ラインの設定には、採算分岐点の算出が必要になります。撤退ラインが決まると明確な引き際がわかりますので、「希望的観測で負を長引かせない」ということです。

目的地が明確なら失敗は乗り越えられる

-これから事業をはじめる人へのアドバイスをお願いします。

なんでも手を出すのではなく、自分たちがやるべき行動に絞ることが大切です。「こんなのあったら売れるよね」と、アイディアが湧くことは誰にでもあります。しかし、私はよくわからないことに手を出して失敗しました。そのため、経営理念・ビジョン・ミッションを明確に定義し、私たちがすべきことだけを行うようにしています。

また、金銭的に賭けの要素がある事業はスモールスタートを意識したほうが良いです。特にキャッシュフロー不足のうちは、失っても良いと思える資金で実績を作っていくとリスクを回避できます。

「うまくいってほしいという感情に頼った行動はビジネスにおいては避けるべき」

-新規事業に失敗したとき、野口さんはどのように精神を保っていますか

誰でも失敗はします。私も失敗してきましたし、これからも失敗するかもしれません。それでも私は「医療の明るい未来」を実現するため、諦めずに挑戦を続けられます。これは私にとって明確な目的地だからです。スキルがないと挑戦できないという人がいますが、そんなものは行動すれば勝手に付いてきます。ですから、「どこへたどり着きたいのか」「なぜやりたいのか」を明確にすることのほうが重要です。

たまたまカフェにいた、見ず知らずの人にアプリ開発を依頼した野口氏。無知が生んだトラブルとはいえ、これは多くのビジネスマンが見習うべき行動力である。

会社名メディカルローグ株式会社
住所東京都港区元赤坂1丁目7番18号 メットライフ元赤坂イースト107
代表野口 宏人
設立2015年5月18日
HPhttps://m-d-l.co.jp/
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